はじめに
上記2点を中心に、様々な疑問について考えてみたいと思います。
特定行為って?
特定行為は、医師、又は歯科医師の指示の下、手順書に基づき実施されます。特定行為とは、診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な、理解力・思考力・判断力、並びに、高度かつ専門的な知識・技能が、特に必要とされるものとして、21区分38行為があります。
日本看護協会は、「特定行為が判断の難易度が高い、あるいは技術の難易度が高いことから、特定行為を実施する際は必ず研修を受講することを推進します。」としています。
どうすれば特定行為ができるようになるの?
厚生労働省が指定した機関にて、特定行為についての研修を受ける必要があります。研修を受けることで、通常は医師に判断・指示を仰いで行えばよいのですが、それが難しい場合に医師の作成する手順書に従って、自己の判断で診療補助を行えるようになります。
え?じゃあ近くに研修機関がないとできないの??と思うかもしれませんが、最近だとeラーニングにより自宅での学習や現在勤務している施設での実習が可能となるケースがあるそうです。
特定行為研修の期間はどれくらい?
指定研修機関や研修を行う区分別科目によるが、大体半年~2年間で修了することができる。
受講料は?
指定研修機関や、研修を行う区分別科目によりますが、おおむね30万円~250万円かかるそうです。高いですね、、、。
ただ!!!以下のような制度があります。
教育訓練給付
一定の要件を満たした雇用保険の被保険者、または被保険者でなくなってから1年以内にある方が、厚生労働大臣の指定する教育訓練講座を受けて修了した場合に、その講座を受講するために支払った費用の4割(上限20万円)を受給することができる制度。
人材開発支援助成金
事業主が、雇用している者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓 練等を計画に沿って実施した場合に、訓練にかかる費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度。
地域医療介護総合確保基金
いくつかの都道府県では、地域医療介護総合確保基金を活用して、研修を受講する受講生やその研修生が所属する施設に対して、受講料や代替職員雇用の費用等の支援を行っています。
全費用を自分で払うのは大変ですし、働いてる病院から研修費として負担してもらえることもあるかもしれませんが、なかなか難しい場合も多いので、こういった制度をうまく活用できれば、と思います。
特定行為研修について
研修受講資格
なんでしょうね、このめんどくさい書き方は。笑 つまるところ、受講には3~5年の経験ほしいけど、別に経験が2年で受講はできなくはないよってことですよね? 個人的には研修で学べることには限界があるので、それなりの実務経験は欲しいと思いますね。最低3年以上の経験くらいははあったほうがいいと思いますがどうでしょうね?
また、特定行為研修は、大卒でなくても、経験年数があれば受講することができます。研修機関数や、終了者数の推移、研修期間の内訳等の情報は、厚生労働省医政局看護課看護サービス推進室のp40~をご覧ください。大学だけでなく、病院でも盛んに研修が行われています!
研修科目について
1.共通科目
- 「臨床病態生理学」
- 「臨床推論」
- 「フィジカルアセスメント」
- 「臨床薬理学」
- 「疾病・臨床病態概論」
- 「医療安全学」
- 「特定行為実践」
の7科目から成ります。半年間で約250時間の受講が必要になります。すべての特定行為区分に共通する理解力・思考力・判断力および高度で専門的な知識・技能の向上を図ります。
すべての共通科目で講義と演習を行い臨床推論・フィジカルアセスメント・医療安全学・特定行為実践の4科目では実習を行います。
2.区分別科目
計21区分に関する科目があります。共通科目が、すべての特定行為区分に共通する能力・知識・技能の向上を図ることに対し、区分別科目では特定行為区分ごとに異なる能力・知識・技能の向上を図るための研修となっています。
すべての区分別科目で講義と実習が行われ、一部の科目では演習も行われます。
選択数によって期間は様々ですが、1区分8時間~34時間受講が必要になります。
研修修了要件
- 科目ごとに履修すべき時間数の5分の4以上出席していること。
- 共通科目をすべて履修し、筆記試験及び一部の科目では観察評価に合格すること。
- 共通科目を修了後、選択した区分別科目をすべて履修し、筆記試験及び観察評価、科目により実技試験(OSCE)に合格すること。
- 臨地実習において、各行為5症例以上実習し、観察評価に合格すること。
とある。21区分の1区分だけを履修することも可能です。
どのような行為が特定行為なの?
特定行為 | 概要 |
経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置調整 | 身体所見(呼吸音、一回換気量、胸郭の上がり等)及び検査結果(経皮的動脈血酸素飽和度、レントゲン所見等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、適切な部位に位置するように、経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの深さの調整を行う。 |
侵襲的陽圧換気の設定の変更 | 身体所見(人工呼吸器との同調、一回換気量、意識レベル等)及び検査結果(動脈血液ガス分析、経皮的動脈血酸素飽和度等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、酸素濃度や換気様式、呼吸回数、一回換気量等の人工呼吸器の設定条件を変更する。 |
非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | 身体所見(呼吸状態、気道の分泌物の量、努力呼吸の有無、意識レベル等)及び検査結果(動脈血液ガス分析、経皮的動脈血酸素飽和度等)等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、非侵襲的陽圧換気療法の設定条件を変更する。 |
人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 | 身体所見(睡眠や覚醒のリズム、呼吸状態、人工呼吸器との同調等)及び検査結果(動脈血液ガス分析、経皮的動脈血酸素飽和度等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、鎮静薬の投与量の調整を行う。 |
人工呼吸器からの離脱 | 身体所見(呼吸状態、一回換気量、努力呼吸の有無、意識レベル等)、検査結果(動脈血液ガス分析、経皮的動脈血酸素飽和度等)及び血行動態等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、人工呼吸器からの離脱を行う。 |
気管カニューレの交換 | 気管カニューレの状態(カニューレ内の分泌物の貯留、内腔の狭窄の有無等)、身体所見(呼吸状態等)及び検査結果(経皮的動脈血酸素飽和度等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、留置されている気管カニューレの交換を行う。 |
一時的ペースメーカの操作及び管理 | 身体所見(血圧、自脈とペーシングとの調和、動悸の有無、めまい、呼吸困難感等)及び検査結果(心電図モニター所見等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、ペースメーカの操作及び管理を行う。 |
一時的ペースメーカリードの抜去 | 身体所見(血圧、自脈とペーシングとの調和、動悸の有無、めまい、呼吸困難感等)及び検査結果(心電図モニター所見等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、経静脈的に挿入され右心室内に留置されているリードを抜去する。抜去部は、縫合、結紮閉鎖又は閉塞性ドレッシング剤の貼付を行う。縫合糸で固定されている場合は抜糸を行う。 |
経皮的心肺補助装置の操作及び管理 | 身体所見(挿入部の状態、末梢冷感の有無、尿量等)、血行動態(収縮期圧、肺動脈楔入圧、心係数、混合静脈血酸素飽和度、中心静脈圧等)及び検査結果(活性化凝固時間等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、経皮的心肺補助装置の操作及び管理を行う。 |
大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整 | 身体所見(胸部症状、呼吸困難感の有無、尿量等)及び血行動態(血圧、肺動脈 楔入圧、混合静脈血酸素飽和度、心係数等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、大動脈内バルーンパンピング離脱のための補助の頻度の調整を行う。 |
心嚢ドレーンの抜去 | 身体所見(排液の性状や量、挿入部の状態、心タンポナーデ症状の有無等)及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、手術後の出血等の確認や液体等の貯留を予防するために挿入されている状況又は患者の病態が長期にわたって管理され安定している状況において、心嚢部へ挿入・留置されているドレーンを抜去する。抜去部は、縫合、結紮閉鎖又は閉塞性ドレッシング剤の貼付を行う。縫合糸で固定されている場合は抜糸を行う。 |
低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更 | 身体所見(呼吸状態、エアリークの有無、排液の性状や量等)及び検査結果(レントゲン所見等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、吸引圧の設定及びその変更を行う。 |
胸腔ドレーンの抜去 | 身体所見(呼吸状態、エアリークの有無、排液の性状や量、挿入部の状態等)及び検査結果(レントゲン所見等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、手術後の出血等の確認や液体等の貯留を予防するために挿入されている状況又は患者の病態が長期にわたって管理され安定している状況において、胸腔内に挿入・留置されているドレーンを、患者の呼吸を誘導しながら抜去する。抜去部は、縫合又は結紮閉鎖する。縫合糸で固定されている場合は抜糸を行う。 |
腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む。) | 身体所見(排液の性状や量、腹痛の程度、挿入部の状態等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、腹腔内に挿入・留置されているドレーン又は穿刺針を抜去する。抜去部は、縫合、結紮閉鎖又は閉塞性ドレッシング剤の貼付を行う。縫合糸で固定されている場合は抜糸を行う。 |
胃瘻カテーテル若しくは腸瘻カテーテル又は胃瘻ボタンの交換 | 身体所見(瘻孔の破たんの有無、接着部や周囲の皮膚の状態、発熱の有無等)等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、胃瘻カテーテル若しくは腸瘻カテーテル又は胃瘻ボタンの交換を行う。 |
膀胱瘻カテーテルの交換 | 身体所見(瘻孔の破たんの有無、接着部や周囲の皮膚の状態、発熱の有無等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、膀胱瘻カテーテルの交換を行う。 |
中心静脈カテーテルの抜去 | 身体所見(発熱の有無、食事摂取量等)及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、中心静脈に挿入されているカテーテルを引き抜き、止血するとともに、全長が抜去されたことを確認する。抜去部は、縫合、結紮閉鎖又は閉塞性ドレッシング剤の貼付を行う。縫合糸で固定されている場合は抜糸を行う。 |
末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入 | 身体所見(末梢血管の状態に基づく末梢静脈点滴実施の困難さ、食事摂取量等)及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、超音波検査において穿刺静脈を選択し、経皮的に肘静脈又は上腕静脈を穿刺し、末梢留置型中心静脈注射用カテーテルを挿入する。 |
褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 | 身体所見(血流のない壊死組織の範囲、肉芽の形成状態、膿や滲出液の有無、褥瘡部周囲の皮膚の発赤の程度、感染徴候の有無等)、検査結果及び使用中の薬剤等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、鎮痛が担保された状況において、血流のない遊離した壊死組織を滅菌剪刀 、滅菌鑷子等で取り除き、創洗浄、注射針を用いた 穿刺による排膿等を行う。出血があった場合は圧迫止血や双極性凝固器による止血処置を行う。 |
創傷に対する陰圧閉鎖療法 | 身体所見(創部の深さ、創部の分泌物、壊死組織の有無、発赤、腫脹、 疼痛等)、血液検査結果及び使用中の薬剤等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、創面全体を被覆剤で密封し、ドレナージ管を接続し吸引装置の陰圧の設定、モード選択を行う。 |
創部ドレーンの抜去 | 身体所見(排液の性状や量、挿入部の状態、発熱の有無等)及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、創部に挿入・留置されているドレーンを抜去する。抜去部は開放、ガーゼドレナージ又は閉塞性ドレッシング剤の貼付を行う。縫合糸で固定されている場合は抜糸を行う。 |
直接動脈穿刺法による採血 | 身体所見(呼吸状態、努力呼吸の有無等)及び検査結果(経皮的動脈血酸素飽和度等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、経皮的に橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈等を穿刺し、動脈血を採取した後、針を抜き圧迫止血を行う。 |
橈骨動脈ラインの確保 | 身体所見(呼吸状態、努力呼吸の有無、チアノーゼ等)及び検査結果(動脈血液ガス分析、経皮的動脈血酸素飽和度等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、経皮的に橈骨動脈から穿刺し、内套針に動脈血の逆流を確認後に針を進め、最終的に外套のカニューレのみを動脈内に押し進め留置する。 |
急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理 | 身体所見(血圧、体重の変化、心電図モニター所見等)、検査結果(動脈血液ガス分析、血中尿素窒素、カリウム値等)及び循環動態等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析 濾過装置の操作及び管理を行う。 |
持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 | 身体所見(食事摂取量、栄養状態等)及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整を行う。 |
脱水症状に対する輸液による補正 | 身体所見(食事摂取量、皮膚の乾燥の程度、排尿回数、発熱の有無、口渇や倦怠感の程度等)及び検査結果(電解質等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、輸液による補正を行う。 |
感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与 | 身体所見(尿混濁の有無、発熱の程度等)及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、感染徴候時の薬剤を投与する。 |
インスリンの投与量の調整 | 身体所見(口渇、冷汗の程度、食事摂取量等)及び検査結果(血糖値等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、インスリンの投与量の調整を行う。 |
硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 | 身体所見( 疼痛の程度、嘔気や呼吸困難感の有無、血圧等)、術後経過(安静度の拡大等)及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、硬膜外カテーテルからの鎮痛剤の投与及び投与量の調整を行う。 |
持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 | 身体所見(動悸の有無、尿量、血圧等)、血行動態及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整を行う。 |
持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 | 身体所見(口渇や倦怠感の程度、不整脈の有無、尿量等)及び検査結果(電解質、酸塩基平衡等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整を行う。 |
持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 | 身体所見(意識レベル、尿量の変化、血圧等)及び検査結果等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、持続点滴中の降圧剤の投与量の調整を行う。 |
持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 | 身体所見(食事摂取量、栄養状態、尿量、水分摂取量、不感蒸泄等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、持続点滴中の糖質輸液、電解質輸液の投与量の調整を行う。 |
持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 | 身体所見(口渇、血圧、尿量、水分摂取量、不感蒸泄等)及び検査結果(電解質等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、持続点滴中の利尿剤の投与量の調整を行う。 |
抗けいれん剤の臨時の投与 | 身体所見(発熱の程度、頭痛や嘔吐の有無、発作の様子等)及び既往の有無等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、抗けいれん剤を投与する。 |
抗精神病薬の臨時の投与 | 身体所見(興奮状態の程度や継続時間、せん妄の有無等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、抗精神病薬を投与する。 |
抗不安薬の臨時の投与 | 身体所見(不安の程度や継続時間等)が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、抗不安薬を投与する。 |
抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整 | 身体所見( 穿刺部位の皮膚の発赤や腫脹の程度、 疼痛の有無等)及び漏出した薬剤の量等が医師から指示された病状の範囲にあることを確認し、副腎皮質ステロイド薬の局所注射及び投与量の調整を行う。 |
おわりに
まとめていて、率直に思ったことを言うとするならば、「今年4月からの2年間で、これ全部出来るようになるの?自信がない・・・。」でした。だからと言って、あきらめるわけでも、落ち込んでいるわけでもないのですが、4月からの記事は、院での勉強のことも載せていけたらなと思っています。
また、看護師として、病棟や手術室、ICUや救外など、固定の場所で働いている場合だと、すべての特定行為にかかわることはないと思います。ですが、自分が目指している診療看護師になって診療科に属することで、この行為を網羅して行っていけるようになると思っています。
それでは!