NP(診療看護師)ってなに?

もともとはアメリカ発祥の制度で、日本ではまだ10数年しか歴史のないものです。自分自身も、「NPって結局なんなの??」って聞かれても、しっかり説明できないなと思ったため、自分の知識の整理も兼ねて詳しく解説してきます。

NPとは診療看護師(Nurse Practitioner)のこと

大学院の修士課程を修了した看護師であり、急変時等の医師不在時においても迅速かつ安全な医療を提供できます。また、あらかじめ作成した手順書に沿って医師不在時にも特定行為をはじめとする診療行為を行うことができます。

国家資格ではなく、日本NP教育大学院協議会という民間の団体が認定を行っている民間資格になります。

資格認定のためには、保健師助産師看護師法 37 条の「特定行為に係る看護師の研修制度」に基づく特定行為に係る研修を大学院修士課程において修了したことを認定されることが必要なため特定行為の研修が必須です。

ここで、時々 “特定看護師” のような呼ばれ方をしている看護師がいますが、特定行為研修は国家資格ではなく、手順書により特定行為を行える看護師になれる、法律で決められた“制度”であり、特定看護師という資格はありません!

ただ、呼称自体は特定看護師で問題はありません!

ただし、このサイトでは、いちいち「特定行為を行える看護師」と書くと長くなってしまうので、あえて「特定看護師」という用語を使って進めさせていただきますね。

NPの歴史は?

もともとの発祥は米国になります。1960〜1970年代医療費の高騰で,家庭医や都市部の貧困層のための医師が不足したことから、それを補うための制度としてスタートします。

  • 1990年代 ナースプラクティショナーの活躍を発表する証明が多数され周知される
  • 1965年 ナースププラクティショナープログラムがコロラド大学のロレッタ・フォード教授により開発され始まる
  • 1998年 NPの診療行為に対する診療報酬上の評価が全州にまで拡大
  • 2004年 急性期や成人など11領域で計14万人になり米国政府や国民からの信頼を獲得した上で定着。

日本では、約20年ほど遅れて

  • 2009年「日本NP協議会」設立(Japanese Nurse Practitioner Association(JNPA))公立大学法人 大分県立看護科学大学大学院にて日本における初めてのNP養成教育がスタートします。第29回日本看護科学学会交流集会でNP教育の議論が始まります。
  • 2010年 第1回NP米国研修(ワシントンD.C.)実施
  • 2011年 第1回NP資格認定試験の実施 第1回「NP資格認定試験」開催 合格者10名
  • 2014年「一般社団法人日本NP教育大学院協議会」設立 (Japanese Organization of Nurse Practitioner Faculties(JONPF))
  • 2015年「特定行為に係る看護師の研修制度」創設

日本にてNP教育が始まってから、今現在(2021年)、600人程の診療看護師が国内で働いていると思われます。

40年ほどの歴史がある米国と比べたら、まだまだ認知度の低い診療看護師。今後、日本でさらに定着して認められるまではまだまだ時間がかかりそうですね…。

NPになるには?

おおざっぱにNPになる条件・流れをまとめると

  • 【1】看護実務経験が5年以上ある
  • 【2】大学院に2年在籍し卒業する
  • 【3】NP認定試験に合格する

です。 【2】の大学院ですが、これは日本NP教育大学院協議会が認定する「NP教育課程の大学院」に2年間在籍します。大学院で所定の単位を取得し、卒業し修士の学位を得ることによって、NP認定試験の受験資格を得ます。

NPに出来ること

  1. 医師の作成した手順書による指示で21区分38行為の「特定行為」を行うことができる
  2. 相対的医行為を的確に行える

看護師が行うことができるものを相対的医行為、医師にしかできないものを絶対的医行為といいます。診療看護師は、医学的な知識を学び診察や検査結果の評価といった相対的医行為を行うことが可能です。いままで医師が行っていた仕事の一部を、肩代わりして実施できるので、医師不足の地域や診療科で 医師の労働負担を軽減したり、様々な業務を円滑に回すための重要な役割を担うことができると考えます。

現在問題となっている、医師不足や地域偏在に対して、医師数を増やすというのは多大な時間とコストが必要になります。そこで、他の業種がしっかりと勉強したうえで医師の仕事の一部をカバーすることは、「タスクシフト」と呼ばれ、これらの問題解決で期待される施策の一つです。

相対的医行為には以下の4つがあります。

①臨床検査 

身体所見の把握、入院時・術前・術後検査オーダー(血液、生化学検査、胸部X線撮影、CT、MRI実施時期の判断)、読影の補助、動脈穿刺による採血、造影剤の投与及び投与後の患者安全管理、麻酔中の生体情報モニタリング、救急・集中医療患者の不整脈監視・管理、救急患者の身体所見の把握・検査オーダー、救急患者の心電図スクリーニング、救急患者の胸部・腹部などのX線写真スクリーニング、救急患者の超音波検査、救急患者のトリアージ、カテーテル挿入時の介助、経食道超音波検査準備・プローベ挿入アシスト、スワン・ガンツカテーテルによる循環動態測定 など

②患者の処置 

動脈ライン・中心静脈ラインの確保、事前指示に基づく呼吸管理(酸素投与濃度等の調節)、術野管理(手術器械・臓器などの保持・把持など)、小手術助手、皮膚・軟部組織の縫合閉鎖、不良組織のデブリードマン、抜糸・抜鈎、抜管、人工呼吸管理と離脱、気管挿管チューブの位置調節、気管カニューレの交換、ドレーン抜去、透析機器の操作・管理、補助循環の管理・操作、人工心肺準備・操作・管理、大動脈バルーンパンピングの動作管理、一時的ペースメーカー操作・管理・抜去、大動脈バルーンパンピングチューブの抜去、経管栄養のカテーテル挿入・交換、胃瘻・腸瘻の管理、チューブの入れ替え、救急患者の気道確保・人工呼吸、電気的除細動 など

③患者の状態に応じた薬剤の選択・使用 

静脈内への薬物投与、持続薬剤投与量の調節、事前指示に基づく循環管理(循環作動薬等の薬剤投与量の調節、抗不整脈薬投与)、事前指示に基づく代謝管理(インスリン投与量の調節等)、事前指示に基づく輸液管理 (総投与量・速度等の調節)、人工呼吸管理下の鎮静、疼痛発熱時の対症療法、便通異常・不眠時の対症療法、副作用監視・出現時の薬剤中止、脱水時の輸液 など

④その他の行為

術前・手術・退院サマリーの作成、麻酔・手術の説明、経過の説明、摘出標本の処理、ICU・術後病棟への患者搬送など

看護師の名称を整理すると・・・

名称必要な看護経験教育・研修役割・できること
診療看護師臨床経験5年以上大学院で2年間特定行為全部+αの医療行為ができる
特定看護師臨床経験おおむね3~5年研修機関で250時間+15~72時間修了した特定行為の医療行為ができる
認定看護師経験5年(うち専門分野で3年)研修機関で6ヶ月以上600時間以上臨床現場で高いレベルの看護技術を行う
専門看護師経験5年(うち専門分野で3年)大学院で2年間高い看護実践能力を持ち、保健医療福祉の発展と看護学の向上に寄与する
※NPでも、特定行為全てできる人だけではない。特定行為全てを履修した看護師と全ての特定行為ができるNPでは、法的にできることに差異はない。

↑ご指摘により上記文章をR5/1/15に追加 書き方が悪く誤解を招く記載であった。

上記のように実施できる特定行為の幅の違いがあります。特定看護師の場合、研修を受けた区分によって、できる行為が制限されます。その点、診療看護師は施設によって異なるものの基本的には全ての特定行為、あるいは大半の特定行為が大学院卒業後に付与されます。

米国と日本のNPはどう違う?

NPの導入は医師不足の解消や医療コスト削減といった観点からも世界的に注目を集めています。

近年はオーストラリアやイギリス、カナダでもNP制度の整備が進んでいます。日本はアメリカのNP制度を参考にはしているものの、日本の法律は、看護師は医師の指示を受けなければ処方や投薬といった医療行為を行うことができないため、その裁量権は大きく異なります。

いわゆるアメリカのNurse Practitionarと、日本の診療看護師似て非なるものなのです。日本看護協会としては在宅医療や医療ニーズの急増に備えてアメリカのNPのような資格の創設が必要だとしています。

終わりに

今はなかなか知名度がなく、ふーん。くらいで終わってしまう人も多いかと思います。ですが、今後日本の医療において、必ず”診療看護師”や”NP”が話題になり、医療を引っ張っていく存在になると私は考えています。

その理解につながる一助になる人物、サイトになれるよう尽力したいと思います。

それでは、次回も読んでください!!またね

タイトルとURLをコピーしました